「もう」は「まだ!」「まだ」は「もう!」
マンション市場に迫る限界──価格高騰と購買力崩壊の危うい均衡
先日、荒川区日暮里のマンションを売却されたいということで、日暮里駅東口から徒歩10分にある物件を訪れました。帰りにランチでも・・っと思い、ラーメン屋さんがあったのでここにしようと思いましたが、入口で立ち止まってしまいました。なんと!チャーシュー麺が1,400円!うーむ、ムリです。
しかし、この急激な物価高・インフレに追いついていけないのは私だけでしょうか?
実は今、不動産やマンション業界で最も深刻な話題は建築コストの異常な高騰です。もちろん、中古物件にとってのリフォーム工事費も。不動産会社が建設会社に支払う費用は、かつてないスピードで跳ね上がっています。
10年前には1戸あたりの単純コストが2000万円、20年前なら1000万円で建てられたマンションが、今では4000万円でも足りないと言われる状況です。半年ほど前に「3000万円」と説明した数字すら、すでに笑われてしまうような勢いです。
最大の要因は人手不足。職人の確保が難しく、現場では外国人労働者が過半数を占めることも珍しくありません。皆さんも建築現場で多くの外国人が汗を流しているのを目にしたことがあると思います。
日本の人口減少が続き、若い世代が少なくなり人手不足の解消は期待できず、建築費はさらに上がり続ける可能性が高いと言わざるを得ません。実際、この人口減少は政府の試算を超えるスピードで加速度がついているようにも感じます。
新築は「富裕層専用商品」になる
例えば建築費が4000万円なら、土地代を含めれば最低5000万円以上。現実的には7000万〜8000万円が下限の相場です。つまり、もはや新築マンションは「一部の富裕層しか買えない商品」へとなってしまいまいました。
東京都内の新築マンションの販売価格は軽く1億円を超えています。普通のサラリーマン世帯が購入できる水準を、完全に超えてしまってはるか彼方の夢物語になっています。
ワイズオフィスを創業した時、私は「普通の会社員が、無理なく買える中古物件を市場に」をテーマに主に3,000万円以下の中古マンション・中古戸建の再販売事業に主力を注ぎました。なぜなら、当時のサラリーマンの平均年収は400万円くらい。無理なくローンが組めるのは年収の5~6倍と言われているからです。
供給は減り、価格だけが上がる異常事態
不動産経済研究所によれば、2024年上半期の首都圏新築マンション供給は前年より11%減少。しかも4年連続の減少です。しかし価格は過去最高。供給は減り、価格だけが上がるという不健全な状態が続いています。根本的に都内にはもはやマンションを建築するような土地はないと言えます。
その一方で、一般家庭の所得はこの10年以上ほぼ横ばい。物価や社会保険料は上昇し、可処分所得は減り続けています。今年春、大企業の賃金は上がりましたが、日本の90%以上は中小企業です。皆さんのお給料は上がりましたか?そこへさらに金利上昇が追い打ちをかけ、住宅ローンの金利は今後上がり続けるでしょう。
脱線してしまいましたが、要するにマンション市場は値上がりを続ける一方、買い手の購買力は着実に削られているのです。これは典型的な「市場の歪み」であり、必ずどこかで反動が訪れるのではないかと考えます。
中古市場も限界に近い
新築に手が届かない人々は中古市場へ流れ込みました。成約は増え、在庫は減り、価格も急上昇。今は「多少無理をしてでも買う」人が増えているのです。足立区・荒川区は庶民の街です。23区とはいえ物価は比較的安く、不動産も「普通の会社員が無理なく買える物件」が普通に流通しておりました。しかし、今はご承知の通りの状況です。
先ほど述べましたが、住宅ローンの限界は年収の7倍程度。無理のない安全圏は5倍程度です。すでに東京都の郊外、埼玉県や千葉県の中古価格でさえ値上がり傾向が続いています。ですので郊外においても住宅ローンを組む人にとっては、その限界水準に近づきつつあるのです。物価や金利がさらに上がれば、もはや普通の人にとって住宅購入は夢となり、あきらめとなり、需要が一気に冷え込む可能性があります。
都心を支える「空き部屋投資」
都心の価格を押し上げてきたのは、外国人投資家や投機筋です。彼らは住むために買うわけではないため、夜になっても灯りの点かないタワーマンションが目立ちます。実際、東京オリンピックの選手村の跡地にできた「晴海フラッグ」の実際の居住者は5割に満たないでしょう。この地域の新しくキレイなスーパーはいつもガラガラで、よく経営が成り立つなぁと心配する人がいるくらいです。
しかも、実際、日本全体で見れば住宅は余っているのです。地方には「タダでもいいから住んでほしい」という家があふれています。一方で都心はバブル、地方は空き家だらけ。このいびつな構造は、必ずどこかで破綻するのではないでしょうか?
崩れるのは「時間の問題」
マンション価格の上昇は2013年から12年以上続いていますが、永遠に上昇が続く市場はありません。
むしろ現在は、供給減・価格上昇・購買力低下・金利上昇という悪条件が重なり、崩壊の前夜に入ったとも言える状況と思えるのです。あまりにも多くの庶民とかけ離れていく状況は・・
この流れがいつ、どのきっかけで一気に動き出すかは誰にもわかりません。もしかしたらこのような意見は、及び腰な悲観論者とみなす人もいるでしょう。不動産や株価が上がっている現実が現実なのであって、それに対応し順応できない人は社会の脱落者とレッテルされるかも知れません。でも、そうでしょうか?この物価高や株価上昇がもたらす恩恵を受ける普通の人がいったいどのくらいいるのでしょうか?もし、市場が何かのきっかけで動揺すれば、その反動は急速で容赦ないものになるとなることを心構えしておく必要はあるかと思います。
私たちはいま、「買えない新築」「高止まりする中古」「広がる空き家」「人口減少」という様々な要因に直面しています。このままいけばいずれ住宅市場・不動産市場全体が深刻なダメージを受け、回復困難な状況に直面する可能性があります。
もし、売却を迷っている、住み替えを考えている・・・このような方はぜひ、ワイズオフィスにご相談して下さい。「もう」は「まだ!」で「まだ」は「もう!」です。